小説:真実の10メートル手前

真実の10メートル手前 を読みました。米澤穂信さんの小説になります。単行本で出てたのが文庫化されたもののようです。

太刀洗という女性ジャーナリストの絡んだ短編集になっています。読んでる途中で気づきましたが、さよなら妖精に出てきた登場人物と同じみたいです。

・真実の10メートル手前
 表題の作品になります。新興企業の社長と妹が姿を消して、偶然家族からの連絡で情報を得た太刀洗が少ない情報から推理をして、今いる場所を探し当てるのですが…というお話。
 全然関係ないけど、続きものかと思って読み始めたので、次の話が関係ないとわかってちょっと面食らいました。この話、あとをひくのかなと思ってたので。

・正義漢
 上にも書いたけど、続きものかと思ってたので全然違う話で面食らいました。しかも、登場人物も一新なのかと思って(途中まで女性が誰だかわかってなかった)。
 駅で発生した人身事故、空気を読まないジャーナリストが周りの迷惑を顧みず、事故現場で取材を開始。「事件記録」と大きな声でボイスレコーダーに録音し始めるのですが…というお話。
 ちょっと理解が遅くて後半でああそういうことかとわかりました。太刀洗が主軸のお話だと思って読んでなかったので。

・恋累心中
 ある高校生の男女が心中を図ったらしいという事件。取材にいく週刊誌の記者のサポートとして別件で現地にいた太刀洗がサポートすることになったのですが…というお話。
 はじめは男の子のほうが勝手に女子生徒を殺して自殺したのかと思ったけど外れでした。真相の方もちょっと予想は外れてしまいました。顧問の先生が怪しいのかと思ったけど、伏線もあって、もう一つ奥に沈む感じに。

・名を刻む死
 ある老人が孤独死を迎えて、その第一発見者となった高校生が少し話題になります。事件がおさまってきた頃太刀洗がその高校生に取材に来るのですが…というお話。
 実はなんか積極的に死に関わってるのかと思ったけど、ちょっと予想と違いました。なんとも言えない読後感の物語になっています。

・ナイフを失われた思い出の中に
 このお話でさよなら妖精とつながってるのだとわかりました(遅すぎ)。マーヤのお姉さんが日本に来ていて、妹の友人だった太刀洗についで?に会いに来るお話。太刀洗は、姉の娘をナイフでさして殺した弟の事件の取材をしていて…という展開。
 ストレートではないけど真摯ではある太刀洗をお姉さんが理解するみたいなお話でいいのかな?事件のほうがなんだか後味の悪い展開となります。そういうオチになるとは思いませんでした。マスコミのあり方みたいなのを遠回しに批判している感じだったりするのかな?単に題材がそうだっただけか。
 あと一人称のわたしがわかってるんだけど、お姉さんなのか太刀洗なのか混乱しちゃって(基本お姉さん視点なので一人なんだけど)少し読みづらかったです。

・綱渡りの成功例
 大きな災害で救助された夫婦がいたのですが、なぜかすごく申し訳なさそうにしていて、太刀洗が取材に来るのですが…というお話。
 これのなにが悪いかのが理解できなくてちょっと腑に落ちない事件?だったかも。カニバリズム的なお話なのかなぁとか勘違いして読んでましたが。

今度出る王とサーカスっていう文庫版もこのシリーズみたいですね。ちょっとまだ、田中芳樹さんと冲方丁さんの小説読み終わってないのでどうするかなぁ。



米澤穂信さんの小説の感想は、こちら。
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この記事へのコメント

藍色
2019年03月15日 05:44
丁寧に作られた連作短編集でした。とても面白かったです。
爽やかな気持ちになれました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

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  • 「真実の10メートル手前」米澤穂信

    Excerpt: 高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める…。太刀.. Weblog: 粋な提案 racked: 2019-03-15 05:31