銀河英雄伝説第2期第32話「武器なき戦い」: あああ

2021年09月14日

銀河英雄伝説第2期第32話「武器なき戦い」

銀河英雄伝説第2期第32話「武器なき戦い」を観ました。旧OVA版になります。

査問会でハイネセンにヤンが呼び出されている状況の中、帝国軍はイゼルローン回廊にガイエスブルグ要塞をワープさせて来ました。
ヤンが戻るまで最短でも4週間。イゼルローンに残った面々は対応に追われることに。
ハイネセンではヤンの査問会が続くも、軍を辞めるつもりのヤンはむしろ事態を楽しむ余裕すらある状態。むしろヤンを助けるためにフレデリカが奔走することになります。
そうは言いつつ、ヤンも堪忍袋の緒が切れるというところで、帝国の来襲の報がハイネセンまで届き……という展開。

ガイエスブルグ要塞の出現に会議を開くイゼルローンの面々。メルカッツたちからの情報によると、少し小さいけど戦力としてはイゼルローンに引けを取らないとのこと。ここのムライのセリフ、実はすごく状況を捕らえていて、ケンプも遅まきながらそれに気づくのですが……という感じですね。

パトリチェフ「至急、ヤン提督に戻って頂かねばなりませんなぁ……、あっ！」
キャゼルヌ「いや、その通りだ。だが、ヤンが戻ってくるのに最低でも4週間はかかるだろう。しかも、この期間は長くなることはあっても短くなることはない。」
パトリチェフ「楽しい未来図ですなぁ。」
ムライ「冗談を言っている場合ではない！もし、イゼルローン要塞が失われれば帝国軍は退去して同盟領になだれ込むだろう。現在国内にはローエングラム公の精鋭とまともにやり合えるだけの戦力はない。そうなれば、同盟は……。」
シェーンコップ「お終いだな。」
アッテンボロー「縁起でもない！」
キャゼルヌ「とにかくだ。打てる手は全部打っておく。艦隊の出撃準備と民間人の避難の用意を！全要塞に第1級臨戦態勢を！万一に備えてコンピュータのデータをいつでも消去できるように！
　そして、ハイネセンへ超高速通信を。『4月10日帝国軍はイゼルローン回廊に大挙侵入せり、しかも移動式巨大要塞をもってなり。至急来援を請う。』」

一方ハイネセンでは、断続的にヤンへの査問会が継続していました。結局、帝国軍がいる間はヤンが必要なわけで、ヤンを処断するわけにはいかないのだから、どういうオチをつけるつもりなのかと逆に面白がる余裕があるヤン。

一方、ヤンを救うべく奔走していたフレデリカたち色よい返事がもらえません。
更に協力を求めたレベロに、民主主義の末期ともいうべき現実を知らされるのでした。
マスコミは査問会のことを取り上げないだろうと。自由惑星同盟の現状はひどいものでした。
反戦団体が、政府の政治家や高官の子弟が戦場に派兵されていない不公平を訴えるもマスコミは取り上げなかったとのこと。

レベロ「この団体が徴兵の不公平を問題にしたんだ。それによれば、政財界や官界の重要人物たちの子弟で実際に徴兵されていたものは15%に満たず、前線に送り出していたのは、わずかに1%だと言うのだ。
　委員会はこのデータをもとに、政府に公開質問状を出したのだがトリューニヒト政権はこれを黙殺した。そして、この件はほとんどのジャーナリズムが取り上げなかったのだ！」
フレデリカ「そんな！」
レベロ「しかも、もっとひどいのはその後だ。やむなくエドワーズ委員会のメンバーはデモに訴えた。ところが正規の手続きを踏んだにも関わらず、警官隊がこれを規制したのだ。裏通りに追い込まれたデモ隊は、そこで例の憂国騎士団に襲われ、女も子供もお構いなしに全員殴り倒された。
　その間、警官隊は遠巻きに見ているだけだった。更に憂国騎士団が引き上げた後、被害者であるはずの委員会のメンバーの方が全員逮捕された。騒乱罪の名目で。」
フレデリカ「……そこまでっ！」
レベロ「そう、そして翌日のマスコミは、会員同士の内紛と報じている。警察発表そのままにな。」
フレデリカ「まさかとは思いましたが、私はまだ甘かったようです。事態がそこまでひどくなっているとは。でも、それでわかりました。今回の件で関係者が怯えたように証言を拒む理由が。」
ビュコック「これが、民主国家の実態とは嘆かわしいことじゃ。」
レベロ「認めたくはないがな。ま、これ以上悪くせんためにも、ヤン提督の件は放っておくわけにもいかん。私も心辺りを当たってみよう。」

ヤンの査問会は続きます。レベロ、ホアンとの接触ができたようです。

オリベイラ「提督、君は優秀な男だが、まだ若いな。戦争の本質というものをまだ理解していないようだ。いいかね、緊張感を欠く平和と自由は人間を堕落させるものだ。活力と規律を生むのは戦争であり、戦争こそが文明の発達を加速し、人間の精神的、肉体的向上をもたらすものだ。一定期間続いた平和と自由は、既に京楽と退廃の世紀末を幻視させてきた。それは君の好きな歴史が証明しているのではないかね？」
ヤン「素晴らしいご意見です。戦争で命を落としたり、肉親を失ったりしたことがない人であれば信じたくなるかもしれませんねぇ。まして戦争を利用して他人の犠牲の上に自らの利益を築こうとする人々にとっては、非常に魅力的な考え方でしょう。
　ありもしない祖国愛をあると見せかけて他人を欺くような人にとってもね。」
オリベイラ「君は、私達の祖国愛が偽物だと言うのか！」
ヤン「あなた方が口で言うほど、祖国の防衛や犠牲心を必要だとお想いなら他人にどうしろ、こうしろと命令する前に自分たちで実行なさったらどうですか？
　人間の行為の中で何がもっとも卑劣で、恥知らずか！それは権力をもった人間や権力に媚びを売る人間が安全な場所に隠れて戦争を賛美し、他人には愛国心や犠牲精神を強制して戦場に送り出すことです。宇宙を平和にするためには、帝国と無益な戦争を続けるより先に、まずその手の寄生虫を駆除することから始めるべきではないでしょうか？」
ネグロポンティ「き、寄生虫とは我々のことかね！？」
ヤン「それ以外のものに聞こえましたか？」

ヤンの我慢も限界を迎えたところで、ネグロポンティに緊急連絡が入りました。ヤン、辞表を出しそびれます。

ヤン「あ！また出しそこねたか……。また政変でも起きたかな？議長が死んだとかなら歓迎なんだが。」

フレデリカたちの元へも帝国軍の襲来の報が届きます。

ビュコック「えらいニュースだよ、大尉。イゼルローンに帝国軍が大挙して侵攻してきたのじゃ。」
フレデリカ「えっ！はっ！では、ヤン提督は査問から開放されますわ！」
ビュコック「その通り、この際帝国軍が救世主というわけじゃ。皮肉なもんじゃが、ヤンの居場所もレベロが調べてくれた。すぐに迎えに行こう。」

査問会の面々も自分たちが火薬庫の隣で火遊びをしていたことに気づきます。

ホワン「我々の成すべきことは考えるまでもなかろう。ヤン提督に、イゼルローンに戻って帝国軍を撃退しろ！いや撃退してくださいとお願いするのさ。」
ネグロポンティ「しかし、それではあまりに……。」
ホワン「では、初志を貫徹して査問を続行するかね？帝国軍がこの惑星に殺到してくるまで。……どうやら選択の余地はなさそうだな。」
ネグロポンティ「しかし、我々の一存では決められん。トリューニヒト議長のご意見を伺わないと……。」
ホワン「では、そうするがいいさ。5分もあれば済むことだし。」

開き直るネグロポンティ、ヤンに帝国軍の迎撃を命令します。ヤンもただでは従いません。

ヤン「……で？行けと仰るんですか？」
ネグロポンティ「当然ではないか！君はイゼルローン方面の司令官だぞ！敵の侵略を阻止する義務と責任があるはずだ！」
ヤン「ですが、哀れにも遠く前線を離れて査問を受ける身。おまけに態度が悪いので、クビになりかねません。一体査問会の方はどうなるのでしょう？」
ネグロポンティ「査問会は中止する！国防委員長として命令する！直ちにイゼルローンに赴き、防衛と反撃の指揮を取れ！」
ヤン「……わかりました。イゼルローンに戻りましょう。あそこには私の友人たちがいますから。で？私の行動の自由は保証していただけるんでしょうね。」
ネグロポンティ「もちろん君は自由だ。」
ヤン「では、失礼させて頂きます。あ、そうだ！大切なことを忘れていた。わざわざ帝国軍が侵攻してくる時期を選んで小官をイゼルローンからお呼びになった件に関しては、いずれ責任のある説明をしていただけるものと期待しております。無論、イゼルローンが落ちずにすめば、の話ですが。では失礼。」

というわけで、誰かが責任を取り辞表が必要となりました。チーン。

議員「生意気な青二才め！自分を何様だと思っているのだ！」
ホワン「救国の英雄ではなかったのかね？彼は。あの生意気な青二才とやらがいなかったら、今頃私達は帝国に降伏してよくて政治犯用の監獄の中さ。少なくてもこんな場所で裁判ごっこにうつつを抜かしてなどいられなかったろうな。
　彼は我々の恩人さ。その彼を我々は恩知らずにもこの数日いびってきたわけさ。」
議員「しかし、あの態度は目上に対して礼を欠くこと甚だしいではないか！」
ホワン「目上？政治家とはそれほど偉いものかね？私達は社会の生産になんら寄与しているわけではない。市民が収める税金を公正に、かつ効率よく再配分するという任務を託されて、それに従事してるだけの存在だよ。
　彼の言う通り、私達は社会機構の寄生虫でしかないのさ。それが偉そうに見えるのは宣伝の結果としての錯覚に過ぎんよ。
　しかし、まぁ、そういう議論よりもっと近いところで火事が起こっているだろう？それを心配したらどうかね？ヤン提督が言ったように、敵の攻撃直前に彼を前線から遠ざけた責任、こいつを誰が取るかだ。辞表が1通必要になるだろうな、もちろんヤン提督のじゃあない。」
ネグロポンティ「ぐぬぬ……。」

再会を果たすヤンとフレデリカ。まずは腹ごしらえをしに行くのですが、ヤンを助けるのに協力してくれたレベロが同席します。有能ないい人で、状況さえ噛み合えば軍事と政治のいいパートナーにさえなりうる組み合わせなのですが……。

レベロ「今、国民が政治に信頼を失いつつあるときに、実力と人望を兼ね備えた高級軍人が一方に存在する。つまり、君のことだがねヤン提督。これは民主共和制体にとって危険極まる事態だ。独裁政治を育てるための温室と言ってさえいいだろう。」
ヤン「すると私は温室の花ですか？」
レベロ「冗談で言っているのではない。この状態は500年前の銀河連邦とまったく同じなんだ。まかり間違えば、君が第2のルドルフ・フォン・ゴールデンバウムになる可能性すらあるんだよ？」
ヤン「ちょっと待ってください！私は権力者になるつもりなど毛頭ありませんよ。もしその気があるんなら去年のクーデターのときにいくらでもその機会はありました。なのに……。」
レベロ「私もそう思いたい。だが、人と言うのは変わるものだ。ルドルフも権力を手に入れるまでは、いささか独善的ではあっても理想と信念に燃える改革志向者、それ以上ではなかったかもしれない。それが絶対権力を得て一変した。全面的な自己肯定がやがて、自己神格化につながったのではないかと。」
ヤン「私も権力を手に入れたら変質するだろうとお考えなのですか？」
レベロ「私にはわからん。ただ、祈るだけだ。君が身にかかる火の粉を払っているだけのつもりで、いつの間にかルドルフと同じ道を歩んでいる、そんな日が来ないことを。
　つまらんことを言ってしまった。さて、私は先に失礼させてもらおう。お互いにそれこそ痛くもない腹を探られたくはないからな。」

トリューニヒトに泣きつくネグロポンティ。しかし、あっさりクビを切られます。それでもトリューニヒトに取り入らなければ行けないのでヤンにも頭を下げる次第。

徐々に近づくガイエスブルグ要塞。イゼルローンは通常運転です。

ポプラン「まったく！こんなときにヤン提督を呼び出すなんて！政府のバカども！毎度のことながら余計なことしかしないぜ！」
コーネフ「そうは言っても、そのバカどもを選んだのは俺たちだからな。」
ポプラン「俺は、トリューニヒトなんかに投票したことないぞ！」
コーネフ「お前が入れたかどうかじゃない。多数決ってやつさ。腹が立つなら教師にでもなって啓蒙運動でもするんだな。」
ポプラン「いちいち正論を言うな！オーベルシュタインか、お前は！」