小説:十字架のカルテ

十字架のカルテを読みました。知念実希人さんの新刊ですが、単行本を文庫化したものなんですかね、帯見ると。

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面白かったけど、長編なのかと思ったら短編を集めたっぽい構成でした。主人公の女医さんの成長物語的なお話になっています。

高校生の頃に友達を事件で無くした主人公。その犯人は精神鑑定の結果、罪を問われないことになって……というのが背景にあって、精神鑑定の先生に師事して色々な事件のケースを通して精神鑑定医として成長していくみたいな感じなっています。

第一話 闇を覗く
 精神鑑定の第一人者である影山に弟子入りした主人功の弓削。新宿で通り魔的な大量殺人を犯した犯人の精神鑑定に立ち会うことになったのですが……というお話。先生の指示で、事件に関しての調査を行いつつ、一見、総合失調症と思われた犯人は先生の面接で鑑定の結果は意外な方向に進むことにみたいな感じに。

第二話 母の罪
 育児に疲れて赤子を殺して飛び降り自殺を図った母親の事件。主人公の調査の結果、詐病の疑いがみつかるのですが……というお話。第一話もでしたが、こちらも予想外な展開にでした。最後は、主人公が学んでいくことだからみたいな感じですね。

第三話 傷の証言
 引き籠もっていた弟が、自立を促す姉に逆上して殺傷しようとした事件。犯人が発したという一言から事件は意外にな方向に……というお話。こちらも、タネ明かされるまでちょっとどうしてそうなるのかがわかりませんでした。

第四話 時の侵食
 今度は鑑定が終わったあとの裁判のお話。先生が事件当時混乱状態ではなかったと簡易精神鑑定した事件の裁判で、犯人側に凄腕の弁護士が付いて……というお話。被害者の父親が証言を翻したり予想外の事態になりますが、調べて行くと更に事態は予想外な方向に展開していきます。

第五話 闇の貌
 主人公の友人が殺された事件の犯人が再び殺人を犯して捕まりました。事情を隠して、先生の鑑定に立ち会う主人公でしたが……というお話。これは中編という感じでした。壁を乗り越えて、真実にたどり着いた主人公でしたが……という感じで展開していきます。もう一人人格が隠れてるのかなぁと思って読んでたという意味では少し拍子抜けというか、外された感じはあったかも。

面白かったし、いろいろな見せ方をしてもらえたけど、シリーズみたいに続くけてくのはネタ的に難しい感じかもですね。色々なパターンが見せにくい感じで。色々な事情という意味ではパターンはありそうだけど、鑑定の観点だとそうでもないというか。
精神疾患に対する世間の誤解であると、客観的な数値化を持ってして示せない鑑定の難しさだとか、鑑定は治療ではなく、捜査でもないとかいう辺りは全然気に留めてなかったので、ちょっと新鮮というかそうなんだと気付かされたところかも。

十字架のカルテ (文春文庫) - 知念 実希人
十字架のカルテ (文春文庫) - 知念 実希人

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